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日本語の疑問

第3回 (回答:当研究所講師)

「さえ」と「すら」の違いを分かりやすく説明するには、どのようにすればいいでしょうか。
「さえ」も「すら」も、極端なものを取り立てて話し手の意外な気持ちを表す助詞です。
多くの場合、「さえ」と「すら」は同じように使われています。
 a.自分の名前さえわからない。
 b.自分の名前すらわからない。
文法書などには、「すら」は「“さえ”の書き言葉」「“さえ”の古い形式」などと書かれています。つまり、「話すときには“さえ”が多い」と説明することができるでしょう。
文法的に見ると、もう少し違いがあります。接続を見てみましょう。
「すら」の前には名詞または名詞句しか来ません。一方の「さえ」の前には、名詞・名詞句のほか、動詞のテ形、マス形の語幹、イ形容詞、ナ形容詞、副詞などが来ることができます。
 c.名前を呼んでさえくれなかった。
  (× 名前を呼んですらくれなかった)
 d.はじめから正直に言いさえすれば、怒られなかったのに。
  (× はじめから正直に言いすらすれば、怒られなかったのに)
 e.空気が悪くさえなければ、子供を連れて行けるのに。
  (× 空気が悪くすらなければ、子供を連れて行けるのに)
接続の違いも学習者が間違えやすいところですね。
「さえ」「でさえ」「も」「でも」の違いは何でしょうか。
 ・ひらがな(○さえ/○でさえ/○も/?でも)書けないんだから、漢字なんて書けない。
 ・そんなこと、子供(?さえ/○でさえ/○も/○でも)知っている。
「でも」の「で」とは何ですか。
まず「さえ」と「でさえ」から取り上げましょう。
 a.ひらがなさえ読めません。
 b.ワインさえあれば、私は満足です。
「さえ」を使った文は、aのように「AさえB」の形でAを例として取り上げ、そのAがBであるから、A以上(以下)のものも当然Bだということを聞き手に推測させる表現と、bのように「AさえBば〜」の形で、「AがB」「AがBない」という条件だけで全てが事足りることを表す表現に分かれます。
aの表現は、「でさえ」に置き換えることが可能ですが、bの表現の場合は「でさえ」には置き換えることができません。
 a’.ひらがな(○さえ/○でさえ)読めません。
 b’.ワイン(○さえ/×でさえ)あれば、私は満足です。
次に「も」との違いですが、「も」よりも「さえ」の方がより意外さを明確に示すことができます。
 c.床に落とした針の音も聞こえるぐらいの静けさだった。
 d.床に落とした針の音さえ聞こえるぐらいの静けさだった。
では「でも」との違いを見てみましょう。「でも」は極端なものを取り立てて、その他の普通のものを暗示したい場合に使われます。
 e.この漢字はあまり使わないので、日本人でも読めない。
 f.この漢字はあまり使わないので、日本人さえ読めない。
eの文の場合、「日本語の漢字が読めるはずの日本人が読めないのだから、外国人は読めなくて当たり前だ」ということを暗示しています。一方のfは「読めるはずだと思っていた日本人が読めないのは意外だ」という気持ちを表しています。
「でも」の「で」は何かという最後のご質問ですが、「で」「も」と分かれるのではなく、「でも」で一つの取りたて助詞です。
(参考)
『中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック』白川博之/監修 スリーエーネットワーク
『中級日本語文法と教え方のポイント』市川保子/著 スリーエーネットワーク
『外国人のための楽しい日本語辞典』鷹野次長/編 三省堂
『くらべてわかる日本語表現文型ノート』大阪YMCA日本語教師会
「〜ために」と「〜ように」を分かりやすく説明する方法があるでしょうか。
目的を表す「〜ために」と「〜ように」は、学習者がよく質問するものの一つですね。まずはこの二つの違いを明確にしておきましょう。
 a.美しい自然を守るために、市民はダム建設反対運動を起こした。
 b.世界一周旅行に行くために、500万円貯めました。
 c.5時までに帰れるように、仕事を急いで片付けた。
 d.クラスのみんながわかるように、先生はゆっくり話します。
aもbも、「ために」の前に使われているのは意志動詞です。これは「ために」が「意識的に目的達成の意志」を表している表現だからです。それに対し、「ように」の前に来るのは、c・dのように無意志動詞(可能形や自動詞)です。これは「ように」が「結果としてそうなることを目的として」という意味を表しているからです。
また、dの文のように一つの文の中で主語が変わる場合には「ために」ではなく 「ように」が使われるという違いもあります。
このような違いを、学習者にどのように伝えていけばいいのでしょうか。
「ために」の場合には、「目的があって、それに向かって努力する」ということを強調すると良いでしょう。例えば、bの例文を使う場合、「私は世界一周旅行に行きたい」という自身で行動を起こせる目的をしっかり示して、「だから一生懸命500万円貯めた」とつなげていきます。
一方の「ように」ですが、dの文で教える場合、「クラスのみんながわかるように、ゆっくり話します」のような文で、「クラスのみんながわかります。いいですね」と、望ましい状態を示します。その上で「だから先生はゆっくり話します」とつなげていくといいでしょう。
(参考)
『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』松岡弘/監修 スリーエーネッ トワーク
『初級日本語文法と教え方のポイント』市川保子/著 スリーエーネットワーク
『みんなの日本語 初級供ゞ気方の手引き』スリーエーネットワーク
擬態語・擬音語の使い分けについて。
「さっと」「すっと」「ぱっと」のすぐにわかる違いの説明はありますか。
「どきどき」と「わくわく」の違い、「ぴかぴか」と「きらきら」の違いなどはどうでしょうか。
擬態語・擬音語に限りませんが、似た表現の違いを教える時には、その表現が使われる状況をはっきり示すと良いでしょう。
 a.授業終了のベルがなると同時に、生徒達はさっといなくなってしまった。
 b.彼の顔を見た途端、彼女の顔色がさっと変わった。
 c.高いところにある本を取ろうとしていたら、すっと彼が寄ってきて、取ってくれた。
 d.力いっぱい開けようとしたのに、ドアはすっと開いてしまった。
 e.メニューを見て、何が食べたいかぱっと決められる人は羨ましい。
 f.大きな熊のぬいぐるみを見て、娘の表情がぱっと明るくなった。
「さっと」は「急に、または非常に短い時間で物事が行なわれる様」(suddenly)を表し、「すっと」は「瞬時に音もなく行なわれる様」、「ぱっと」は「動作・作用・変化などが瞬間的に起こる様」(quickly)を表します。どれも短い時間で何かが行なわれる或いは起こる様を表していますが、「さっと」は「急に・急いで」、「すっと」は「音もなく」、「ぱっと」は「素早く・勢いよく」何かが行なわれるというところがポイントだと言えるのではないでしょうか。
次に、「どきどき」と「わくわく」を見てみましょう。
 d.彼に会うと、どきどきします。
 e.彼に会えると思うと、わくわくします。
「どきどき」は「運動・興奮・恐怖・不安などで激しく動悸のする様」で、「わくわく」は「期待・喜びなどで心が弾み、興奮気味で落ち着かない様」です。dとeのように、似たような状況で文を作るとわかりにくいかもしれませんが、「どきどき」は「激しく動悸する様」ですので、喜び以外の原因でも起こります。
 f.階段をちょっと登っただけなのに、もうどきどきしてしまっている。運動不足かしら。
fのような文は「わくわく」とはなりません。「わくわく」とは「動悸」ではなく、「期待」や「喜び」を原因として、心が弾んだり、興奮することです。
それでは最後に「ぴかぴか」と「きらきら」です。
 g.星がぴかぴかしているよ。
 h.星がきらきらしているよ。
このような文で見ると、「ぴかぴか」と「きらきら」は似ていますね。以下の文ではどうでしょうか。
 i.愛車をぴかぴかに磨き上げてデートに備えた。
iの文では「きらきら」にはなりません。
 j.彼を見上げる彼女の目はきらきら輝いていた。
jの文は「ぴかぴか」になるでしょうか。
「ぴかぴか」は「艶があって照り輝いている様」で、「またたくように光り輝いている様」です。ですから、星の場合にはどちらも使えますが、「磨いたもの」には「ぴかぴか」が多く使われ、「光を発しているもの」には「きらきら」が多く使われる傾向があると言えるのではないでしょうか。
(参考)
『広辞苑』岩波書店
『日本語大辞典』講談社
インターネットサイト「日本語を楽しもう」 こちら
A:ありがとうございます。
B:いいえ。
このような会話の場合、どうして「はい」じゃなくて「いいえ」ですか?という質問をよくされます。ビギナーのこの質問に、どう答えたらよいのかわかりません。
日本語を学習し始めたばかりの人が最初に知る「いいえ」は「A:これは本ですか」「B:いいえ、それは雑誌です」の「いいえ」なので、お礼を言われた後の返答としてはおかしな感じがしてしまう学習者もいることでしょう。「ありがとう」に対する返答としての「いいえ」の後には、「こちらこそ」「どういたしまして」などが省略されていると思われますが、これは「お互い様ですよ」「そんなに感謝してくれなくていいんですよ」というよう気持ちを表しています。学習者に質問された場合には、「これは本ですか」の返事としての「いいえ」とは違う、ということを説明しましょう。さらに加えるとしたら、「いいえ、私もありがとう」のニュアンスだ、のように出していくと分かりやすいのではないでしょうか。
初級の学習者に教えるときは、単なる否定の「いいえ」とはアクセントを変えて、「これは本ですか」の返事は「いいえ(高い所を●、低い所を○で表すと○●●)」とし、「ありがとうございます」の返事は「いいえ(●○○ ※最後の「え」は軽く上げる)」と軽く言うようにするという方法もあります。
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