日本語の疑問

第7回 (回答:当研究所講師)

「歴史に幕を閉じた」「歴史の幕を閉じた」どちらが正しいですか。
2007年10月27日の産経ニュースにこんな記事がありました。
「船のへさきに見立てた独特の外観で知られる大阪・梅田の大型商業施設「HEPナビオ」(大阪市北区角田町)が28日、閉館する。(略)オープン当初を知る従業員や馴染みの客らに惜しまれながら27年余りの歴史に幕を閉じる。」
「幕を閉じる」というのは、「舞台などの幕が下ろされて芝居が終わる」ことから転じて、「ある物事を終わりにする」という意味で使われます。
ですので、歴史の幕を下ろすのではなく、ある歴史を終わらせるという意味ですから、前者の「歴史に幕を閉じる」が適切だと思います。
インターネットの検索サイトで「歴史に幕を閉じた」「歴史の幕を閉じた」を検索して、ヒット数を比べてみました。(2007年11月)
    Yahoo   歴史に 40.600件   歴史の 840件
    Google  歴史に 22.900件   歴史の 2250件
    Goo     歴史に 1.960件    歴史の 454件
圧倒的に、「歴史に」が多いですね。
ただ、「歴史の」も全くないわけではありませんので、それだけ、迷う人が多いということでしょう。
先日、「〜なさい」文型を教えましたが、これに専門的な名前がついているのでしょうか。また、他の言語でも、命令形と「〜なさい」文との違いは見られるのでしょうか。
「早く起きなさい」「静かにしなさい」などのように使われる「なさい」は、「なす」の尊敬語「なさる」の命令表現です。動詞の『ます形』に付き、名称らしいものはあまり見かけませんが、「起きろ」「しろ」といった命令形に対して『丁寧な命令』などと言われることもあるようです。(「現代日本語文法概説」庭三郎著 こちら
命令形と「〜なさい」文との違いについて、他の言語についてはどうでしょう。例えば、“Turn left.”“Be quiet.”などのように英語でも動詞の原型を最初に持ってくる命令形は、標識や手順、広告のコピーなどに多く使われ、教師が学生に、あるいは親が子どもに命令や指示をするときは、もう少しやわらかい表現が使われているのではないでしょうか。いかがですか。
(参考)
・「日本語大辞典」講談社
・「初級を教える人のための日本語文法ハンドブック」スリーエーネットワーク
「〜ている」「〜てある」「〜ておく」をいわゆるマニュアル通りに教えてもなかなか定着しないのですが、どうすればいいですか。
「〜ている」「〜てある」は、どちらも変化の結果の状態を表します。ただし、「〜ている」の「〜て」の部分は自動詞のて形、「〜てある」の「〜て」は他動詞のて形が入ります。「〜ている」が表す変化は、「昨日、台風で木が倒れました。今も倒れています」のような自然な変化あるいは「あの壁に落書きがされています」のように誰が行ったかわからない行為による変化です。一方、「〜てある」が表す変化は、「もう明日の会議の準備はしてあります」のような、目的があって行った意図的な変化です。この二つの表現を導入するときには、「〜ている」の方は目的のない自然な変化、「〜てある」の方は目的がある意図的な変化であることを見せるようにしましょう。文型練習では、「〜ている」には自動詞、「〜てある」には他動詞が使われるということを示しておくといいでしょう。
「〜ておく」は「友達が来るので、ビールを冷やしておきます」という文に見られるように、何かのために前もってする準備を表します。目的のために行う行為ということで、「〜てある」と混同されやすいのですが、「〜てある」は変化した結果の状態の方に重点が置かれ、「〜ておく」の方は行う行為の方に重点が置かれています。
「〜ておく」を導入するときには、「何をしますか」と学習者に問いかけるなどして、行為を意識させるようにするといいのではないでしょうか。
とは言うものの、導入で違いを見せるだけではなかなか定着しません。会話練習などを通して、それぞれの表現が使われる場面を提示しながら理解をはかっていくことが大切です。
会話練習につかうモデル会話の例を挙げます。

(1)「〜ている」
 A:Bさん、コートのボタンが取れていますよ。
 B:あ、本当ですね。ありがとうございます。

(2)「〜てある」
(教室で)
 A:何か貼ってありますね。あれは何ですか。
 B:来週のテストのお知らせが貼ってあるんですよ。
 A:そうですか。ちょっと見てきます。

(3)「〜ておく」
「〜ておく」は「〜てある」と違い、「田中さんに電話しておいてください」「私が買っておきましょうか」のように「〜ください」「〜ましょうか」のような表現を付けて使われることがよくありますので、このような表現を使う場面を会話練習で使うといいでしょう。
 A:来週、パーティーをしませんか。
 B:いいですね。
 A:私はみんなに連絡しておきますよ。Bさん、ケーキを予約しておいてくれませんか。
 B:わかりました。

(参考)
・「日本語文法ハンドブック」スリーエーネットワーク
・「初級を教える人のための日本語文法ハンドブック」スリーエーネットワーク
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