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第53回公開講座参加者アンケート質問&回答

公開講座終了後のアンケートにいくつかテストや評価に関する質問がありましたので、高見澤先生にお答えいただきました。


Q1: 授業や筆記テストで成績のよい学生とそうでない学生が、オーラルテストになると、あまり差がなくなる傾向があります。オーラル面での能力の違いだと考えておりましたが、緊張度の違いでもあるとも思えます。そのような場合に我々はどのように考えればよいのか、例えば、飲み会などの場の会話を通して指導することも指導といえるのか、それはそうはいえないのか、ヒントをいただければと思います。

A: オーラルテストで差が出てこないということは、テストの内容が能力の差別化を測定できないことに起因します。実施しているテストがどのような形式で行われているかわかりませんが、CRT(目標準拠テスト:受験者個人が設定された目標に達しているか否かを判定する)であれば、設定された目標にすべての受験者が到達しているので、そのような結果になったとすれば、それはそれで、いいのですが、NRT(集団準拠テスト:受験者個人の集団内での相対的位置をみる)において筆記試験で差が生じているのなら、問題(=質問)が易しすぎたのか、測定する試験官が許容範囲を広範囲に認めて、そのために差が生じないということになります。テスト制度をさらに検討し、精度の高いシステムにする必要があると思います。
飲み会などの自由で有意味的(meaningful)な会話は学習者の自信を形成する上で、充分に効果あるものと思われます。教師と学習者の相互理解を促進するためにも役立つでしょう。
(※千駄ヶ谷註:学習者との授業外での交流は学校によっては制限されている場合もあります。)

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Q2: オーラルテストについては、必要性を感じつつも、どうすればいいのかよくわかりません。教師はどのように専門性を高めるべきなのか、また学習者のレベル判定についてどういう基準ですればいいのか、教えていただきたいです。

A: 教師は教育の場で日常的に個人的な評価を行いながら、授業を進めています。ドリルをもう一回すべきかこれで充分かを判断するのも、一種の個人的評価です。
ただ、一定の基準に受験者の能力が達しているかどうかを判断したり、受験者集団の上位者を選抜するような公的試験の場合には、その妥当性、信頼性を確保するために、テスターや問題作成者は相当の訓練を受ける必要があります。訓練の内容は試験の種類によって異なりますが、それぞれの試験において公平性や妥当性、信頼性を確保するために行います。具体的な訓練方法については、近く『オーラルテストの方法と基準』(現在執筆中)を刊行しますので、参照してください。

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Q3: a.最近アルク社が『電話で10分日本語会話能力測定』ツールを開発しましたが、このテストについて、先生のご意見を頂けたら幸いです。
b.JITSCOの会話テストはいつごろリリースされますか。

A: a.残念ながら、現物を見ていませんので、何ともいえませんが、いろいろな形でコミュニケーション能力を測定する方法が開発されるのは、結構なことだと思います。
b.公開講座でお話ししたとおり、JITCOテストは、現在実験中ですが、実施時期については、まだ明らかにされていません。対象は現在改善が予定されている「研修生・実習生」ですから、制度的な面の整備がなされた後になるかもしれません。

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Q4: a.初めにお話しされた「変わる日本語教育」についてですが、政府・企業にどう働きかけをすれば良いとお考えですか。
b.オーラル試験についてですが、通じる日本語は完璧、習得時間も短く済む(=コストが安い)とした場合の試験は問題ないと思われますか。企業を相手にしたときコストの問題は重要で、単語でも日本語が通じれば評価をあげられるのか否かなどの問題について、どうお考えですか。敬語を話さなければならない試験は別として、中国の方が習得しにくいとかも含めてです。

A: a.政府や公的機関については、個人的な働きかけは難しいので、民間日本語教育機関が目的を明確にした連合体を結成して、団体として意見具申をする方法が考えられます。日本語の普及、留学生の大量導入などには民間機関の協力が必要なのは明らかです。
b.企業に「ビジネス日本語テスト」を認知してもらうことが必要ですが、そのためには、企業のニーズを調査し、それを適正なテストとして完成させない限り、説得力がありません。日本語教育も企業への就職を望む外国人対象の場合は、企業のニーズを満たす教育を優先すべきだと思います。

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Q5: 私は企業で中国人を中心に日本語やビジネススキルを教え、また評価しているという立場にあります。弊社でも独自の会話テストを使い、社員に対して会話テストを行なっています。しかし、社員によっては、性格が大人しすぎるためなかなか話が発展しなかったり、簡単に答えてしまい、低い評価になってしまう人もいます。そこで、ずっと疑問に思っていることがあります。性格の大人しさ活発さということが会話能力の高い、低いという評価に影響を与えてしまっても良いのか? ということです。ちなみに私は、今の会社に入る前は、8年程学校での日本語教師をしておりました。

A: コミュニケーションの場では、積極性も一種の才能になります。したがって、オーラルテストで充分な応答をしなかった人の評価が低くなるのは、やむを得ません。
ただ、中国人には確かに「正確な言語使用」を重視するあまり、テストに際して「超慎重?」になり、発話を最小限に止めようとする人がいるのは事実です。このような人の指導は、通常の授業において「気楽に話す訓練」が必要です。それには、学習者が興味をもつ話題や熟知している問題について話させるとともに、教師が過敏に矯正を行うことを慎み、学習者をリラックスさせて、発話量を増やすよう誘導することが大切です。

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Q6: これまでラジオ局のアナウンサーの仕事をしてきた私は、自分に出来る得意分野を活かして、日本語教師として更に携わりたいと考えております。その一つに実はOPIのワークショップを受けることを視野に入れていたのですが、OPIの必要性、どんな人におすすめされるか、また、OPIの活かし方を教えていただけると嬉しいです。

A: OPIのワークショップは、会話テストの技法を指導しますが、通常の授業でも役立つコミュニケーションの指導法も身につきます。ただ、講座の性格からして日本語教育の経験がある程度以上ないと、理解しにくく、効果があがらない可能性があると思います。

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Q7: a.米国政府の外国語試験は、1人ずつの試験だと思いますが、1人あたりどれぐらいの時間をかけるのですか。
b.同じく、その採点はあくまで試験官の主観による測定ですね。
c.JITCOの発話テストは1人あたり何問で何分ですか。

A: a.米国の国務省試験は、すべての言語で受験者1名に対してテスター(試験官)とエクザミナー(判定官)の2名が試験に当たります。読解テストを除く、オーラルテストの部分は、通訳テストも含めて、正味約3時間です。(詳しくは、『日本語テストハンドブック』日本語教育学会編 大修館書店 参照)
b.主観テストですが、充分な訓練を受けた試験官や判定官が膨大にして綿密な規則規定に基づいて判定するので、主観的な誤差を排除する工夫がなされています。
c. JITCO発話テストは現在のところ、正味8分以内ですが、中級テストや上級テストはその倍近くになると思います。

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Q8: 日本語のクラスでコミュニケーション能力を図るテストを試行錯誤しながら作成しております。実際日本語のクラスでそういったテストを行なう場合、一番効果的な方法はどんなことだと思われますでしょうか。

A: 授業で行うテストは、学習事項が身についているかどうかを確認するための会話テストと、学習した話題に関連した会話でコミュニケーション能力を測定するためのテストがあります。質問者の方が実施しているのはどちらの方法なのかわかりませんので、確かなことは言えませんが、前者は形成評価的で、後者は総括評価的ですから、後者の方がより自由な発話を引き出すことができ、(評価ではなく、教育、能力育成のためには)効果的です。一般的には、内容的な負担の少ない(つまり、受験者に知識の上での負担が少ない)話をさせ、しかも、テストを成功させると、コミュニケーションに自信を持ち、その後の学習姿勢が積極的になります。自信を持ち、それに支えられてリラックスして話すようになり、能力育成に役立ちます。