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日本語教師こぼれ話

『では・・・』

 授業がはじまってすぐのことです。教室に入り、いつも通り「おはようございます」と挨拶をし、出席を取ろうと思い「では・・・」と言った瞬間、学生数名が『出席をとりましょう!!』と口をそろえて言ったのです。「皆さん、それは私のセリフ ですよ」と言いながらも、いつも教師が何気なく使っている言葉のひとつひとつを、学生達は本当によく聞いているのだなと感じました。

 初級クラスを担当する際は、【これから話す言葉を学生達がすでに習っているかどうか】を常に意識し、使う言葉をかなりコントロールしているのですが、 中級クラス以上になると、そういった意識がどうしても薄れてくるため、そんなときこそ「常に私の言葉は皆に聞かれている」と自覚を持ち、注意 しなければと改めて感じさせられたのでした。他にも、授業と授業の合間の「では・・・」に対しては『休憩です!!』、授業終わりのチャイムが鳴ったあとの「では・・・」に対しては『授業は終わりです。また明日!』と元気よく答えて(?)くれる学生達の姿に、いつも癒されています。(小池)

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オリジナルの会話作り

 学生たちが自分で会話を作れるようになることを目指して、私たち教師は、学生に会話練習の指示を出します。

 例えば、
A:この料理はからすぎますね。 
B:そうですね。
教科書に載っているのは、この会話だけですが、続きを考えさせます。
A:私は食べられません。
B:そうですか。私は頑張りますよ。全部食べます。
という具合です。

この「オリジナル」と呼んでいる会話作りで、学生たちは徐々に独自の会話を増やしていきます。習った表現や語彙を思い出し、それが使えるという喜びが味わえ、実際の会話に近づくことができます。しかし、オリジナルの会話作りは、すでに初級を終えた学習者にとっても、努力を要する作業です。

中級の文法で、「~からには…」「~に決まっている」を勉強している時でした。いつものように、「オリジナル」の指示を出したところ、次のような会話が飛び出してきたのです。

A:いつも先生はオリジナルの文を作りなさいって言うね。
B:オリジナルの文を作るからには、ちゃんとした文じゃないといけないよ。
A:でも、それが難しい。ぼくが作る文は、論理性がないに決まっているもん。(「~もん」は数日前に学習した文法事項)
B:そんなことはないよ。今の文は正しかったと思うよ。

「素晴らしい会話ですね!」と褒めながら、内心、「オリジナル、オリジナル」と言い過ぎなのかな、と少しだけ反省も。学生を伸ばそうとする教師の心と、伸びたいと思う学生の心が響き合うような授業を心がけていきたいものです。(野上)

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手土産は…?

外国人A:ごめんください。
日本人B:はい。あ、Aさん、いらっしゃい。どうぞお上がりください。
外国人A:お邪魔します。これ、つまらないものですが召し上がってください。
日本人B:ご丁寧にありがとうございます。

 このような、人の家を訪問したときの会話を、敬語の応用会話練習として取り上げることがよくあります。上記の会話を読んで、どのような情景を思い浮かべましたか。訪問した家の人に迎えられて、靴を脱いで家に入り、手土産を渡 す。教師になったばかりの頃、私は、デパートの包装紙に包まれたお菓子の箱を渡すイメージでこの会話の授業を行なっていました。

 特に意図はなかったのですが、クラス全員で話ができればと思い、あるクラスで、「Aさんが、今、持って行ったお土産は何だと思いますか」と聞いてみました。お菓子、ケーキ、果物のほか、欧米の学生からはワインという言葉が返ってきました。また、韓国の学生からは「焼肉」とあり、驚きました。焼き肉用の肉を持って行くということで、韓国の学生は皆、うんうんとうなずいていました。ベトナムはコーヒーが有名なので、学生たちは、一斉に「コーヒー」と言いました。

 授業で練習する会話内容はひとつでも、イメージすることは様々であるということを実感したのを思い出しました。(早川)

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箱根へ行って来ました

 先日、遠足で学生たちと箱根彫刻の森美術館へ行ってきました。
 彫刻庭園に集合すると、自然に囲まれ、開放的できれいな空間に、学生たちはうれしそうでした。
彫刻に興味を持ってくれるかなあ…と少し心配しながら進んでいくと、彼らは巨大な彫刻の前で立ち止まり、なかなか動きません。
鑑賞方法も様々です。

○ひたすらじーっと見つめる(満足するまで見る)。
○様々な角度から見る(右から見たり、左から見たり、後ろに回ってみたり)。
○作品タイトルを読んでみる(意味のわからない、読みにくい言葉は質問する)。
○写真を撮る(気に入った作品は自分も一緒に写る、納得できる写真が撮れるまで撮る)。

 庭園を3分の2ほど進んだときには30分が経過し、残り時間40分。先を急いで進むと、芝生の上にうつぶせになった人型の彫刻が置かれていました。 「先生、これは土に入りますか?出ますか?」(「これは地面に入るところですか?それとも地面から出てくるところですか?」と聞いているらしい)
 体は地面に隙間なくぴったりくっついているため、土に沈んでいくようにも見えますし、土から出てきたようにも見えます。「おもしろいですね」「これは寝ていると思います」「いや、倒れています」「もしかしたら地面から生まれてきたところ?」

 いろいろ話しているうちに、残り時間が少なくなってしまいました。そこからは、ピカソ館を通り、庭園をぐるっと回って出口へ向かいました。彫刻に興味を持ってくれるかなあ…、という心配はいらなかったようです。(木島)

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休みボケ?

 私の教える校舎では、毎年約2週間の夏休みがあります。夏休み明けの初級クラスの授業で「~すぎる」という文型を学習した際に、「夏休みが短すぎます」という文に対してクラスの皆が大きくうなずきました。

 夏休み明けの数日間は、「海へ行きました」、「富士山に登りました」「大きな吊り橋を渡りました」など、休み中の経験を嬉しそうに話す様子とともに、普段とはちょっと違う様子も見られました。

 初級クラスでは、何か言いたいことがあるのに言葉が出て来ず慌てて教科書を見返すという姿が見られたり、中級クラスでは、「そこに友達がありましたが…あっ、いましたが」など、普段はしないようなミスが目立ったりと、皆のエンジンがかかりきらない場面が続発。上級クラスでも、毎日行う小テストのディクテーションで、「祖父と同居するために自宅をリフォームした」という教師の音声のみの出題に、数名の学生が「ソフト同居するために…」と書き取り、答え合わせの時に「ソフトな同居って?!」とお互い笑ってしまう場面もありました。

 もちろん、普段も失敗を繰り返しながら前進する日本語学習ですが、この数日の様子が休みボケなのだとしたら、2週間という夏休みは「短すぎる」わけではなく、程良い長さなのかもしれません。(廣比)

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面接で何を話すべき?

 日本で進学を目指している学生たちは、日本語の学習はもちろん、受験のためにさまざまな準備も進めています。そんな学生たちが最も心配しているのは「面接」です。外国語である日本語で面接を受けるのは、まさに頭が真っ白になるほどの緊張です。

 ある学生は緊張のあまり、面接が終わると「ごちそうさまでした!」と言って部屋を出てしまったそうです。緊張が解けたからかもしれません。「もうダメだ~」と諦めていましたが、結果は合格でした。

 学生たちにとっては面接の質問の中で、「卒業後はどうしますか?」が一番難しいそうです。
先日、卒業後について聞かれたらどう答えればいいのか、と学生たちから真剣な質問がありました。
 私(教師):どう答えればいいと思う?
 学生1  :「将来のことはまだ分かりません。」
 私    :面接のとき「分かりません」と答えたら、面接の先生はその答えをいいと思うでしょうか?
 学生たち :う~ん…。
 学生2  :面接の先生が気に入ることを話します。
 学生3  :ホームページを見て、先生が求めていることを話します。
 学生4  :…それじゃ、みんな同じ答えになってしまうかもしれない…。
 学生5  :じゃ、うそを言います。
 学生6  :上手なうそのつき方を教えてください!
 私    :(絶句)!

 すると、ある学生が「正解はないんですね」と言いました。その通りです!テストの正解のような、決まった答えがあるはずがありません。私は言いました。「正解は、一人ひとりが持っているんだよ。勉強している間に、将来の希望が変わることだってある。変わってもいい。若いみんなが変わるかもしれないことは、大学の先生だって分かっている。でも、将来についてどう考えているか、今の計画を大学の先生は知りたいんだよ」。私自身、学生のときに将来像をはっきりイメージしていたとは言えません。でも、「面接」があるからには、学生たちには「考えて」ほしい。留学という大きいチャレンジをした学生たちです。自分と向き合って考えれば、きっと未来の可能性がたくさん出てくるはずです。(小川)

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『作文は好きじゃありません』

 初級の作文授業では、自分自身のことや身近なことをテーマに文章を書き、相手に伝える練習をしています。
先日のテーマは、「日本でおどろいたこと」。学生たちは、「作文は好きじゃありません」とブツブツ文句を言いながらも、一生懸命書いて発表してくれました。
・街にごみ箱が置かれていないのにきれい!
・日本人はおじいさんおばあさんになっても、朝から図書館で勉強していてすごい!
・道に迷ったとき、通りすがりのおばさんが目的地まで連れて行ってくれた!
・セルフレジサービスが成り立つ安全社会がすごい!
・オタクや変わったファッションの人も街に溶け込んでいるのが面白い!
・落とした財布が、そのままの状態で戻ってきた!

 ポジティブな驚きが多い中、こんな驚きもありました。
・ルールを大切にする日本人でも、信号無視をする人が多いこと
・見た目がかわいい女子大学生が図書館で靴を脱ぐこと(行儀が悪くてショック)
・電車の人身事故が多いこと
・家族のつながりが薄いこと(独り暮らしのお年寄りが多い)

 まだまだ知っている表現が少ない初級の学生たちにとって、作文を書くことは非常に労力を要します。それでも、私たち日本人と異なる視点で、おもしろく、ときに考えさせられるような内容の作文を書いてくれます。
今日も「はぁ~…(作文嫌い)」というため息が学生たちから聞こえてきそうですが、学生たちを何とかやる気にさせ、励まし、授業を進めていきます。(荒井)

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中国の学校はいじめがない!?

 初中級クラスの「読解」授業でのこと。教科書に出てくる600字程度の論文を読み、内容理解や要約練習を行う授業ですが、今日の論文のテーマは、「学校のいじめ問題」。まず、教科書を開く前に、学生に質問をしてみました。

「みなさんの国の教育問題と言ったら、どんなものがありますか?」

 当然、「いじめ問題」が挙がってくると思っていたのですが、学生からの答えは全く別のものでした。彼らが口をそろえて言うのは、「中国の学校はとにかく勉強が忙しすぎる」というもの。

学生1「中国の高校は、朝7時から夜10時までで、夜遅くまで学校で勉強します。それが普通です。」

学生2「先生、私は高校生の時、平日は太陽を見たことがありませんでした。太陽が出ている時間はずっと教室の中です。」

教師:「えっ!?そんなに長い時間授業をするの?」

 聞けば、中国の学校ではそれが当たり前とのこと。高校生は特に平日は、勉強以外の時間はほとんどないそうです。しばらく、中国と日本の学校の学習時間の違いについて盛り上がったあと、「じゃあ、他の教育問題はある?例えばいじめの問題とか。」と聞いてみました。するとみんな、首をかしげます。中国の学校では「いじめ」はそれほど多くなく、特別問題にはなっていないようなのです。

「もしかしたら中国の学校は自分の勉強が忙しすぎて、他人をいじめるような時間はないのかもしれないね。日本の学校は暇がありすぎるのかもね…。」

 私が言うと、学生たちは、みんな大きくうなずいています。学生の話を聞いて、日本のいじめ問題の原因について改めて考えさせられた授業でした。

 授業の中では、こちらが教えるだけではなく、反対に学生たちに、彼らの国の生活、文化や考え方について教えてもらうことがたくさんあります。私自身もそこから、日々、刺激や影響を受けています。(山田)

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こんなことも役に立つなんて!

 日本語教師になる前に「今までの経験が全て活かせる仕事だ」という言葉をよく耳にしました。ですが、日々の生活の些細なことまで役に立つとは思ってもみませんでした。

 ある朝、一人の学生が急に日本企業へ面接に行くことになりました。企業研究も何もできないまま面接を受けることはできませんので、その学生は大急ぎで準備をしていました。しかし、日本語の勉強途中の学生が集められる情報には限りがあります。見るに見かねて、「何という会社を受けに行くの?」と聞いたところ、なんと、たまたま数日前に見たテレビで取り上げられていた企業だったのです。その番組では最近の取り組みや今後のビジョンなどが紹介されていました。私もすべての内容を覚えてはいなかったので、思い出せる限りのことを学生に伝えました。

 それが面接でどの程度役に立ったかわかりませんが、「日本語教師という仕事は、本当に経験の全てが役立つ仕事だなぁ」と実感する出来事でした。(渡邊)

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「正しい発音で!」

 日本語教師として現場に立つと、学生の発音の問題に出くわすことが多いです。

 例えば、ある学生との面談中…。
私「受験の準備はどうですか。大丈夫ですか。」
学生「はい。この大学院には、わたしの煎餅がいます。その煎餅がいろいろ教えてくれました。」
私(せ、煎餅…?)
その場で必死に頭をフル回転させ、学生は「先輩」と言いたいのか、と気付くのに5秒ほど時間がかかりました。

 このように、教師は日々、頭の中で様々な言葉を連想し、学生の言わんとしていることを推測しています。しかし、「正しい発音で話さなければ伝わらない」ということを学生に感じてもらうために、あえて学生同士で会話をさせることがあります。学生は日本語母語話者ではないので、推測したりしてくれない、ある意味教師よりも発音に厳しい存在だからです。

 さて、中国人学生同士で会話をさせたところ、こんな事件がありました。
Aさん「私は、国でチャドーを習っていました。」
Bさん「あ~。チャドーですか。私も習いたいです。先生は日本人でしたか。」
Aさん「はい。日本でもチャドーを習いたいです。」
彼らは2人とも、「茶道」を「チャドー」だと思い込み、話が通じてしまっていたのでした。私が正しい読み方を指摘したところ、2人とも大笑い。同じ国籍同士なら、稀に伝わってしまうこともあるんだね、という事件でした。次は、中国人同士でもちゃんと「さどう」と発音してくださいね!

 ・・・・・・後日談・・・・・・
この文章を書いたあと、日本語教師の先輩に「茶道には、ちゃどうという読み方もあるんだよ」と言われました。
知らなかった…。(津島)

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何事も時代とともに…

 私たち日本人にとっては1月1日がお正月ですが、中華圏では旧暦のお正月を祝います。日本で旧正月を迎える学生たちは学校が休みになるわけではありませんが、どこかソワソワしているように見えます。

 以前、学生から中国のお正月の風習について聞いたことがありました。その話を思い出し、先日、中国人の学生のいるクラスで、「中国では、お正月に親戚がたくさん集まって、みんなで餃子を食べるんですよね。その中のいくつかにはお金が入れられていて、それを食べた人は一年間お金に困らないという言い伝えがあるんですよね。」と少し得意げに話すと、「先生、その話は古いです。今は違います。」と言われてしまいました。詳しく話を聞いてみると、今は衛生面や安全面を考えて、お金ではなく、ピーナッツや飴玉、黒糖などを中に入れるとのことでした。また、餃子は家庭で作らずお店で買う、そもそも餃子は作らない、外食する、旅行に行くなど、最近ではお正月の過ごし方も家庭によってだいぶ違うようです。

 「日本ではどうですか。」と学生に質問されました。日本のお正月料理と言えば、お節料理ですが、最近はコンビニでも買うことができます。インターネットでも買うことができます。

 なるほど…。どの国でも、昔からの風習は時代とともに変わっていくものなんですね…。数年後、また同じ話をしたら、今度はどんな話が聞けるのでしょうか。日本にいながら、異国の生きた風習の話が聞けるのも、この仕事のおもしろいところなのかもしれません。(永島)

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